えすえに。

朝か。大体半時の6の刻(午前6時)だろう。身体がこの時間帯に起きるよう軍に居た頃の習慣が身についてしまっていた。

兵士「おい、朝だぞ。いい加減起きろ。」

秘書「ん…まだ6の刻じゃないですか…いつも私は8の刻まで…。」

兵士「仕事だ。とりあえず村人の職業や人口について聞いておきたい。」

 

眠気まなこをこすりながら秘書が起きてきた。こいつは本当に軍人かと思えるほどの体たらくだ。こいつがここに居る理由も頷けるというものだ。

 

秘書「そうですね…ここは商業区とは離れてますが、木こりの方や木の皮で作る裁縫術に長けた方が多いそうです。漁業はさほど力を入れていないそうで、主に森林開拓で商業してるみたいですね。人口は400人ほどでしょうか。あっ!」

兵士「ん、なんだ?」

秘書「そういえば木こりの方が昨日から行方不明になってたと…」

兵士「なんでそれを先に言わないんだ、軍隊は村人の保護が第一だろ。」

秘書「いえ、せっかくここに就任してから1日目なので暗い話は…」

兵士「アホか、とりあえず聞き込みをしつつ探しにいくぞ」

秘書「わかりました、聞き込みですね!」

 

本当に大丈夫だろうか。まぁとりあえず不謹慎だが村人に顔を出す理由にもなるだろう。

 

食堂屋のおかみ「あら秘書ちゃんいらっしゃい!お隣りにいらっしゃるのは、えっと…?」

秘書「あ!この人が昨日から軍に派遣されてきた兵士さんです!」

兵士「どうも。ちょっとお聞きしたいことがありまして…」

 

かくかくしかじか、と経緯を話す。

 

食堂屋のおかみ「なるほどねぇ…木こりなら昨日ここの食堂でごはんを食べた後に森へ向かったみたいだけど。森には低級の魔獣しか居ないから、魔獣に襲われるって心配はなさそうだけど…」

兵士「わかりました。ありがとうございます。とりあえず森に向かうか」

食堂屋のおかみ「ああ、そうだ。何か食材になるものがあったらウチに持っておいでな。何か料理を作ってあげるからさ」

秘書「本当ですか!?おかみさんの料理はおいしいからー」

兵士「ほら、早くいくぞ。それでは失礼します。情報提供ありがとうございます。」

 

食堂屋を後にして、森へ向かうことにした。鬱蒼と茂る森だが、樹木は針葉樹ばかりだ。針葉樹は成長が早いので林業が盛んになったんだろう。

 

秘書「ひええ、森って巨大ナメクジとかグンタイアリが居るらしいじゃないですか、あまり攻撃的ではないとはいえおっきな虫は苦手というか…」

兵士「なに言ってんだ、俺は前衛。お前は後衛でサポートをしてもらうからな。安心しろ、撃ち漏らしはほぼ無いはずだ。」

秘書「それなら安心ですね。…?うなり声?が聞こえますね?」

兵士「ん?何も聞こえないが…」

秘書「あっちです!ほら、あそこ!」

 

草むらをかき分けて進むと、倒れた巨木に下敷きになった男がうなり声を上げている。どうやら、倒れた巨木に足が引っかかってしまい抜けないようだ。

 

兵士「あんたが木こりか?とりあえず木をどかすぞ。おらっ」

 

ずずん、と大きな音を立てて木をどかすと、2メートルはあるだろうか。自分より大きな大男がこちらに向き直ると、

 

木こり「ありがとうよ。木を切ってたら目算を誤って自分の方に倒してしまったみてぇだ。あんたらが助けにこかったら大変な事になってたな。」

兵士「大変な事?」

木こり「ああ、今日の夕暮れに商業街から商人が来るんだ。この切り出した木材を売って生計を立ててるんだがよ、商人が来るのは毎週1日だけなんだ。今日を逃すと来週になっちまうし、そうなると一度に全部切り倒した木々は運ばないからな。」

秘書「たしかに今日でしたね!間に合ってよかったです。ところで、その木は…?」

木こり「ああ、これは切り出して運ぶんだが仲間を呼べなかったから親切ついでにあんたたちと一緒に運んでくれると助かるんだが…」

兵士「それは了承したぞ。そうだな、木材の流通は全てあんたが一任されているのか?」

木こり「そうだな、兼業のやつらはちらほら居るが、本業として木こりを営んでいるのは俺だけだ。お前らが木々を切り出してくれたなら見積もりは俺でするぜ。もちろん、この木もだ。」

秘書「この木一本だといくらになるんですか?」

木こり「せいぜい500ゼニーってところだな。俺は木を切る専門だから、鑑定士が居れば商人と交渉してもっと値はつけられるとは思うんだがな」

兵士「なるほどな。とりあえず運ぶぞ。」

 

巨木を軽々と持ち上げて秘書と木こりが感嘆の声をあげる。腕っ節には自信があるからなんてこともない。このまま軍を辞めて木こりとして転向するのも悪くない…が、何か忘れてるような?

 

駐屯地にて

 

秘書「今日はなんだか疲れてしまいましたね、でも木こりさんも見つかってよかったです!」

兵士「そうだな、木材の売買は木こりに任せるとして、軍資金の援助について聞きたいことがあるんだが…」

秘書「軍資金の援助、ですか?うーん、そんな書類は見当たらなかったような気がしますが…」

兵士「なんだって?じゃあ他に書類が送付されてなかったか?」

秘書「そうですね、これならありますが…ええと、要約すると『駐屯地にて軍資金を100万ゼニー確保せよ。軍事商業流通ルートを抑える事。』つまり、お金を貯めて関所として商業ルートを開拓しろってことですね」

兵士「…それ以外は?」

秘書「ないですね。」

兵士「…マジか」

 

愕然とした。軍資金は全て自分で調達、更に商業ルートを開拓するまで帰ってくるな、ということだ。これはもう逃げ出したくなるほどの無理難題だ。

 

秘書「大丈夫ですよ!木々の運搬を手伝えば多少のお小遣いが貰えますから!それで頑張りましょう!」

兵士「お前、どれだけの年数がかかると思っているんだ…商人が来るのに週1回、木こりの分と合わせて積載できる木材の量は3000ゼニー分がいいところだろ。年数が経てばここは必要不可の駐屯地となって、しまいには…」

秘書「しまいには…?」

兵士「俺たちはクビってことだぞ。はぁー、本当にどうすんだこれ…。」

秘書「クビは嫌です!またお母さんの酒場で働くことに」

兵士「お前はまだいいけど俺はアテがねーんだぞ… ったく、どうすれば…」

 

ぐきゅる、とお腹のなる音がした。音の出どころは俺ではない。こいつか。

 

秘書「……あ、もうそろそろお腹減りませんか?クヨクヨしてたってしょうがないし、食堂に行きましょうよ!」

兵士「まぁ、そうだな、森に入った時に食える野草やきのこも採取しておいた。これで食費は浮くだろ。」

秘書「いつの間に!さすがですね、さっそくご飯を食べにいきましょー!」

 

呑気に食堂に向かう兵士と秘書を、上空から見つめている黒い影があった。

???「…グルルル」

 

今日はここいらで終わりにしよう、続きは書くか微妙。